新聞に喝!

広告にまで忍び寄る言論の不自由 元東大史料編纂所教授・酒井信彦

9月2日の新聞各紙(朝日・毎日・読売・東京)の朝刊に週刊ポストの広告が出た。その中で目立っていたのが「韓国なんて要らない 『嫌韓』ではなく『断韓』だ 厄介な隣人にサヨウナラ」という見出しだ。ところがこの広告がネットで拡散、差別的な特集だとして複数の作家が執筆拒否を宣言。小学館が謝罪コメントを出すに至った。

小学館の根性の無さにもあきれるが、4日には同社を強く批判する論説が現れた。毎日は「日本社会の一部にはびこる韓国人への偏見やヘイト感情におもねり、留飲を下げる効果を狙ったのではないか」と言い、東京は「ポスト誌は謝罪談話を出したが、真の謝罪とするためには、当該号の回収も検討すべきだ」と気を吐いている。言論人が週刊誌の広告にまで検閲をはじめ、メディアがそれに同調した形だ。言論の自由にとって、大変な脅威である。

朝日はこの問題を、5日の社会面で批判的に大きく扱っているが、毎日・東京に比べて、多少抑えた姿勢がみられた。記事の末尾で「今回はポストの広告を載せた新聞社の責任を問う声も上がった」と述べ、同社広報部の「出版物の広告については、表現の自由を最大限尊重しながら審査・掲載しています。今回の週刊ポストの広告表現も編集部の見解ではありますが、差別を助長しかねず、不適切ではないかというご批判がありました。真摯(しんし)に受け止めて、広告のあり方について今後も検討を重ねてまいります」とのコメントも載せている。

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