「官僚ブラック労働」は置き去り 森裕子氏の質問通告問題

 国民民主党の森裕子参院議員が、15日の参院予算委員会に向け提出した質問通告が外部に「漏洩」したとして政府を追及している。野党は内閣府からの漏洩を疑うが、所管する北村誠吾地方創生担当相は流出を否定する。逆に、当初森氏が内容を聞き返さなければならないような簡潔な通告しか行わず、官僚が長時間の残業を強いられた問題は置き去りになりつつある。

 発端は台風19号の本州上陸を控えた11日夜。ネット上で「森氏の質問通告提出が遅れ、役所で深夜残業を強いられている」という趣旨の匿名投稿が相次いだ。

 実際には質問通告は期限内の11日夕に提出された。ただ、当初は「質問要旨」として「現下の経済情勢と消費税増税、金融政策について」などと簡潔な内容にとどまった。森氏はその後も断続的に質問詳細の「追加ペーパー」を役所側に渡し、省庁は深夜まで対応に追われた。

 国会対応で官僚が「ブラック労働」に追われる実態は、かねて問題視されてきた。森氏の対応がネットで炎上する中、旧民主党政権で官房副長官を務めた松井孝治氏が、ある資料をツイッターに投稿した。

 資料は政府内のシステムの画面を印刷したもので、15日の参院予算委に関し、省庁が質問内容を把握した日時などが読み取れる内容。松井氏は次のようなコメントを付していた。

 「官僚の相当数が連休中に働いていることがうかがわれる。きちんと正規の情報を開示した方が健全だ」

 騒動は16日に様相が一変した。森氏や野党幹部が記者会見し、森氏の質問通告が質疑前に外部へ「漏洩」したとして、調査チームを設けて追及すると表明したのだ。森氏はこう訴えた。

 「憲法に規定された国会議員の発言の自由、憲法そのものに対する挑戦だ」

 ただ、今のところ調査チームは、質問通告が違法に外部流出した客観的事実は確認できていない。

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