住民の合意難航…50年以上、無堤防状態 多摩川氾濫の東京・二子玉川

 整備計画では、住民の理解が得られやすいように、まず最低限の高さの暫定的な堤防(暫定堤)を築いた後、交渉を続けてより防災性の高い正規の堤防に再整備する2段階方式で進められている。26年には、堤防がなかった約1キロのうち、地盤が低く水害の危険性が高い下流側の約600メートルに暫定堤が完成した。残りの無堤防区間でも今年6月、住民から暫定堤への同意が大枠で得られ、堤防の設計に着手したところだった。

 ただ、暫定堤は14・5メートル前後の最低限のもので、過去の記録を踏まえると越水の恐れがあるため、国は16メートル前後の正規の堤防が必要と訴える。しかし、正規の堤防を整備するには家屋の移転などが必要となる。整備計画は一連の事業を遅くとも13年からの30年間で終えるとしているが、「完了時期は見通せない」(国交省関係者)のが実情だ。

 東洋大の及川康教授(災害社会工学)は「今後起きうる水害が台風19号を上回る可能性は十分にある。河川付近の住民は自覚的に情報を収集し、氾濫が起きうる場所で暮らすという『覚悟』を求められるようになるだろう。行政は被災リスクを分かりやすく提示し、住民との丁寧なコミュニケーションを行っていくほかない」と話している。(玉崎栄次)