朝晴れエッセー

免許皆伝・10月25日

先日、お箏(こと)のお免状をいただいた。

小学校から二十歳ごろまで姉妹で習っていた。若い頃は、度胸も据(す)わっており、イギリスにお箏を持って路上ライブをした。当時ではまだ珍しい着物姿のツイン・シスターズと、日本の音楽に、現地のテレビや新聞紙面を飾ったこともあった。

それからほとんど弾くことなく結婚、出産。子育てが少し落ち着いた40歳代、久しぶりに弾き始めたが、間もなく突発性難聴を発症。以来何度もめまい、耳鳴り、難聴を繰り返し挫折。

50歳代に入りそれらがようやく落ち着いた。両親も高齢になった。ふと、もう一度、感謝を込めて姉妹で弾くのを聞いてもらいたいと再び始めた。父が亡くなる1年前ではあったが、自宅に招き、ささやかな食事会での演奏を、ずっと微笑みながら聞いてくれていた父の姿が忘れられない。

その頃、自分の周りに50歳半ばを過ぎて起業した人、する人がいた。そろそろ年金の計算を始めていた私は、軽いショックを受けた。

私の後半人生、このまま、お箏を趣味として終わらせるのではなく、それ以上のことができるお免状の取得に挑戦してみようか。年齢や再発を恐れずに、前に進んでみよう。

それから猛練習。励ましてくれる家族や友人、そして、いつも丁寧にご指導くださるお箏の先生。みんなに支えられて今ようやく「皆伝」。目標まであと一歩。

夢は演奏依頼されたり、海外で弾く機会があれば、また行ってみたい。お箏の音色にのせて私の夢も広がっていく。

石谷 雪子 53 大阪府八尾市