始まりはボートピープル
なぜ数ある地域の中で八尾にベトナム人が集まるようになったのか。その始まりは約40年前までさかのぼる。
八尾市文化国際課などによると、1975年のベトナム戦争終結後も国内は混乱が続き、多くの国民が危険を避けるため、祖国を離れる決断を迫られた。海に脱出先を求める「ボートピープル」が続出し、何十人もがすし詰め状態の小舟で命がけで他国へ逃れた。
こうした人々を含む「インドシナ難民」の受け入れを、日本も78年に決定。翌年から多くのベトナム人が来日し、空きのあった八尾市の雇用促進住宅にも80年前後に3~5家族が入居した。これが八尾とベトナムの関係の始まりだった。
その後は本国の家族を呼び寄せるなどして八尾に来るベトナム人が徐々に増え、2014年には1千人を突破。これまで毎年100人前後の増加だったが、特に今年は伸びが大きく、10月1日時点で昨年末から300人以上増の1907人のベトナム人が暮らす。
SNSで広がる魅力
八尾がベトナム人をひきつける理由は何か。
レさんは「ベトナム人が多い上に、八尾の日本人も親切で住みやすい」と話す。ベトナム人は会員制交流サイト(SNS)のフェイスブックで情報共有するケースが多く、「口コミがSNSで広がり、最近は他の町から移り住む人も多い」という。
ベトナム人らに支援を行うNPO法人「トッカビ」(同市)によると、八尾は特定の学校にベトナム語話者を配置するなど、生活支援が充実しているという。代表理事の朴洋幸(パク・ヤンヘン)さん(50)は「子育てもしやすく、多言語での情報発信が細かいのも、八尾を目指す要因だろう」と話す。