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大阪府八尾市は多くのベトナム人が集まることで知られる。市内にはベトナムの料理店や食材を扱う店が点在し、「テト」と呼ばれる旧正月にはベトナム式の祭りも行われる。今年に入ってからは同国の転入者が急増するなど、八尾の町にすっかり定着した「リトルベトナム」は、どのように形成されてきたのだろうか。(桑村朋)
民家を改装した寺院
JR八尾駅から徒歩約10分の高美地区。閑静な住宅街の中を歩くと、飲食店などの看板に見慣れないベトナム語が目につく。ただ、意識して通らないと見逃しそうなほど、どの店も町に溶け込んでいた。
ある行き止まりの角に足を踏み入れると、青や黄、赤などのカラフルな旗で彩られた民家風の建物があった。ベトナム仏教寺院の「福光寺」だという。中では近所のベトナム人らが談笑したり、お祈りしたりしていた。
「ここは日本で暮らすベトナム人にとっては貴重なコミュニケーションの場です」。八尾ベトナム人会会長のレ・フン・クンさん(58)が教えてくれた。
福光寺は4年前、民家を改装して造られた。本国から運んだ仏像が置かれ、日本という異国で心を寄せる貴重な祈りの場であり、ベトナム人同士の交流の場にもなっている。
周辺には、ベトナムの国民食「フォー」やサンドイッチ「バインミー」が楽しめる飲食店や、現地食材を販売する店、カラオケやビリヤード喫茶店など十数店舗が点在する。いずれも主な客はベトナム人だが、レさんは「最近は日本人にも徐々に知られるようになってきた」と喜ぶ。