話の肖像画

映画監督・是枝裕和(57)(10)細部で家族を描く

〈家族の夏の一日を描いた「歩いても 歩いても」(20年)の脚本は、母親が亡くなった翌年の18年に書かれた。母の死に対するグリーフワーク(喪の作業)でもあった〉

家族を描いているホームドラマは、細部がすべてです。てんぷらとかうなぎの食い方とか、細部で日常感や家族の距離感を表しています。あの作品で交わしている会話というのも、年賀状の話とか、そういう本当に取るに足りない話の中で対立したり、なにか氷解したりする。

作品の中でトウモロコシの天ぷらが出てくるのですが、あれは母がよく作ってくれていたものです。ホームドラマというのは自分が体験した日常の細部がどうしてもベースにないと、嘘っぽくなるんですよ。それは僕の体験じゃなくてもいいんです。美術の方のでも。そういう下から積み上げていく作業が足りないといけない。(聞き手 水沼啓子)

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