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北朝鮮がミサイル発射か 海上保安庁発表

主張

シリア情勢 米国は露の浸透を許すな

 8年半に及ぶ内戦が続くシリア情勢が重大局面を迎えている。

 トルコとロシアが、トルコが敵視するクルド人勢力をシリア北部の国境地帯から排除することで合意した。露、トルコ両軍は国境付近を共同巡視するという。

 ロシアは、トルコの越境攻撃を受けてクルド人勢力と手を組んだシリアのアサド政権軍の後ろ盾でもある。

 トランプ米大統領がシリア北部に駐留する米軍の撤収を表明したことで生じた「力の空白」に、ロシアが間髪をいれず介入した。憂慮すべき事態である。

 これに先立ち米国とトルコは5日間の停戦で合意し、22日に期限を迎えた。その間にクルド人民兵組織は国境地帯からの撤退を終えたとするが、トルコ側は国境から30キロとより広範囲な「安全地帯」からの撤収を迫っている。

 一方でトルコとアサド政権との関係は悪いままだ。シリアに駐留する露軍の動向が国境地帯の支配権の行方を左右している。

 そもそも、シリアを含む中東地域の安定と紛争抑止に米国の存在は不可欠である。にもかかわらず、トランプ氏は米軍の撤収と本国帰還を志向している。来秋の大統領選に向け、「出口なき戦争からの撤退」を望む支持層を意識するからだろう。

 安易な「撤収発言」は、トルコ側に越境攻撃のゴーサインを与え、米軍に協力して過激組織「イスラム国」(IS)掃討を担ったクルド人勢力を見捨てる形となった。与党・共和党からも外交上の失態と批判を浴びている。

 トランプ氏は、米国は「警察ではない」と述べ、シリア・トルコ問題は「われわれの国境ではない」と撤収判断の正当性を強調した。超大国の指導者の自覚など微塵(みじん)も感じられない。

 ほくそ笑むのはロシアだ。米軍撤収の間隙を突いて部隊を国境付近に進軍させた。シリア内戦への関与を強め、イランを加えた反米連合形成を進める思惑だろう。

 IS復活の恐れもある。混乱に乗じて戦闘員や家族が脱走したとされ、欧州連合(EU)は難民に紛れたテロリスト再流入に危機感を抱く。

 米外交の迷走は、ロシアに中国を加えた現状変更勢力の介入を許し、同盟国を不安定の渦に落とし込む。地域に安定と均衡を取り戻す責務を果たすべきである。