朝晴れエッセー

元大統領の伝言・10月24日

「ウルグアイの元大統領が、友人からもらったボロボロの車をアラブの富豪が100万ドル(約1億円)で買うって話があったのに、友達を傷つけるからって断ったらしいよ」

メキシコに留学中、級友からそう聞いた。「世界一貧乏な大統領」と呼ばれたホセ・ムヒカ氏のことだった。以来、過去の演説や著書に触れてひきつけられ、会いたくなった。だが簡単に会えるわけがない。あきらめていた私の背中を、父の言葉が押した。

「会いたいなら、会いに行きなさい。会えても、握手だけで満足したらいけんよ。インタビューもさせてもらいなさい」

この夏、右も左も分からないウルグアイの首都モンテビデオのバス停で、勇気を振り絞り、40歳ぐらいの女性に「ムヒカ氏の家を知りませんか」と聞いた。

彼女は「ぺぺ(ホセの愛称)の家に行くにはこのバスに乗るんだよ。あとは中に乗っている人に聞いたら教えてくれるから」と、強引に私をバスに乗せた。さまざまな人に助けられながら、彼の家にたどり着いた。

心臓がのどから飛び出る思いで来意を告げると、倉庫のような質素な建物に招き入れられた。そこにいたムヒカ氏はマテ茶を飲みながら、私を隣の席に座らせた。

彼は「国内総生産の計算ばかりして、幸せの計算をしないのは間違いだ。それは非常に貧しい」と話し、日本の若者へ「学校は就職のために行く場所ではない。幸せになる方法をトレーニングする場所だ。素晴らしい人生とは『生きる理由』を持ち続ける人生のことだ」と伝言を託してくれた。 これを伝えるために、書いている。

岩本心 20 大学生 京都市右京区