テレビ朝日・TBS… 相次ぐ「やらせ」なぜ

 テレビ朝日映像には男性ディレクターの上にチーフディレクターやプロデューサーもおり、放送に至るまでには、テレビ朝日のデスクらも交えて3回のプレビューが実施されたという。だが、これだけのチェックを通しても、不適切な演出に気付くことはできなかった。

 男性ディレクターが動機に挙げた「自信がなくなった」という点について、篠塚常務は、男性ディレクターが過去にも類似した企画を撮影していたことをあげ、「その時に自分が思うようなものができなかったということではないか」と推し量った。

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 9月に問題となったTBSのバラエティー番組「消えた天才」では、映像を早回しすることで、実際の投球速度よりも速く見えるような加工が行われていた。一部のスタッフはTBSの調査に対し「天才の度合いを強調したかった」と話したという。同番組とバラエティー番組「クレイジージャーニー」の2番組が打ち切りとなった。

 両ケースとも、制作者側に理想のストーリーや映像があり、それを際立たせようとするあまり不適切な演出が行われたことがうかがえる。長年テレビ番組の制作に携わってきた上智大学文学部の碓井広義教授(メディア文化論)は「視聴者がやらせや仕込み、フェイクニュースに敏感になる一方、作り手の意識が追いついていない。見たいと思うものと、見せたいと思うものとに乖離が生じている」と指摘する。「安易にやらせに走らないよう、プロフェッショナリズムを持ち続けるには自らが意識してチェックするしかない」と厳しい。

 動画配信サービスなどとの競争で、テレビの立場は相対的に弱くなりつつある。碓井氏は「情報の信頼性という点では既存メディアの方にまだ少し利があった。自分たちが描いたストーリーに絵を当てはめるような番組づくりを続けていては、業界として視聴者の信頼を取り戻せなくなる」と警鐘を鳴らしている。

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