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朝晴れエッセー

万年筆・10月22日

20年も使い続けた万年筆が古くなり、インクの出が悪くなった。思い切って新品の外国製万年筆を買おうかと思い立ち、隣の市の老舗文具店へ行った。

ショーケースの中には国産品はもとより、パーカー、ウォーターマン、ペリカンが華々しく並んでいる。

それらの品々を手にし、試し書きをしていると、店主が言う。

「お客さん、外国製品なぞやたらとあこがれない方がいいですよ。外国製万年筆はアルファベットを書くためにあり、国産品は漢字、平仮名、カタカナ文字を書くのにペン先の作りが微妙に違っています。万年筆自体が破損したとき、修理代も外国製は高いですよ」と。

店主の言葉に私の心は揺らいだ。文具店という商売をしているとはいえ、客を神様扱いしない、売れればいいということもなく、まして客の私に外国製品をすすめるわけでもなし。

それどころか自国の製品に対する誇りというものが感じられる言葉であった。

客の私に店員がすすめる。こんな品はいかがです、と言って一本差し出した。リングの部分に象眼細工が施してある。初めて目にする、工芸品のごとき万年筆である。ほれぼれするような品で私はそれを買った。

名品という万年筆、書き心地もよし、それもさりながら、私はあの文具店で何か尊いものを買ったという気がする。

古神早苗 60 茨城県常陸太田市