朝晴れエッセー

運動会のヒーロー・10月21日

秋空の下、にぎやかな歓声が聞こえる運動会。運動会最後のリレー競技で彼は1人2人と抜いていき、ひときわ大きな歓声を受けている。背が高くて色黒でいつもモテモテな少年がいた。それは遠い遠い昔の話だけど…。まさに彼は運動会のヒーローだった。

昨年の春、久しぶりに同窓会があった。同窓会にその彼が来るということで、おばさんになった女子たちは少しドキドキと落ち着きがない。でも、やってきた彼は以前の彼のような、はつらつとした彼ではなかった。体は痩せてあまり元気そうにはみえない。それぞれ順番に近況報告して、彼の番になった。彼は静かに話した。

「今日は同窓会にこれてよかった。みんなに会えるのは今回が最後になると思って頑張って来たんだ。僕は病気でいまは自宅療養しているから」

会場の空気が張り詰めた。この年になるといろいろと経験している仲間もいて、それぞれの体験話を交えて彼を励ました。そして、頑張れ! と固い握手をして笑顔で写真を撮った。

同窓会から1年以上が過ぎた。今頃彼はどうしているのだろう? もうすぐ、孫が生まれるんだって言っていた。可愛い孫と一緒に笑顔で暮らしているだろうか? 中学から県外に進学したので彼の近況を知る人は少ない。

今年もどこからか運動会の歓声が聞こえる。リレーで走る少年時代の彼を思い出した。きっと、元気でいるよね。今度は、みんなで還暦のお祝いをしようね。

木村 千秋 59 奈良市