【iRONNA発】研究力の低下 博士課程が抱える3つの傷心 石渡嶺司(1/3ページ) - 産経ニュース

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研究力の低下 博士課程が抱える3つの傷心 石渡嶺司

大学ジャーナリストの石渡嶺司氏
大学ジャーナリストの石渡嶺司氏

 旭化成名誉フェローの吉野彰氏がノーベル化学賞を受賞した。日本出身の受賞者は27人となる快挙だが、大学の博士課程進学者が減少するなど、研究環境は十分とは言えない。このままでは、受賞が途絶えるだけでなく、研究力の低下も懸念される。どこに問題があるのか。

 平成3年に文部省(当時)は大学院生の在籍者数を10年間で倍増する計画を打ち出した。実際に、博士課程在籍者数は同年度の3万人近くから令和元年現在は約7万4千人にまで増えている。在籍者数を増やす、という計画そのものは成功した。一方で、博士課程への進学者数は平成15年をピークとして、緩やかな減少傾向が続いている。

 日本では最近、大学生や大学院生(修士課程)を取材しても「博士課程には行きたくない」と敬遠する学生が多い。では、なぜ博士課程への進学は嫌われてしまったのだろうか。減少理由として考えられるのが、「在籍中の学費負担と劣等感」「大学教員への不信感」、そして卒業後の就職難を含む「博士課程のキャリアの不明瞭さ」の3点である。

 ◆負担は1千万円超

 まず、「在籍中の学費負担と劣等感」だが、言うまでもなく博士課程に進学して、在籍もしていれば、その分学費がかかる。そのうえ研究も、となるとアルバイトする時間もままならない。そうなると、奨学金に頼るしかなく、学部時代から通算9年(学部4年、修士2年、博士3年)受け取ると、1千万円を軽く超えてしまう。

 さらに、見逃せないのが劣等感である。博士課程を修了するのは20代後半から30代前半の年代だ。この年代は民間企業だと主任・係長から課長クラスにまで昇進し、大手企業であれば年収が1千万円を超えていることもある。その間、博士課程の在籍者はどれほど稼いだとしても、数百万円程度にすぎない。事実、大学院生を取材すると、同年齢の友人や知人に対する劣等感が強いことが明らかだ。