9月25日付保守系紙フィガロはマクロン仏大統領が民放ラジオで「仏独政府が(温暖化対策を)妨げているとは思わない」と、トゥンベリさんに反論したことを報じた。温室効果ガスの最大排出国である中国、パリ協定を脱退した米国ではなく、環境政策に熱心なフランスやドイツがやり玉に挙げられたことへの矛盾を指摘し、トゥンベリさんはいまや「新たな宗教」のような存在で、批判が難しいという仏政府高官の嘆きを伝えた。
トゥンベリさんへの批判が仏で広がり始めたのは、彼女が7月に訪仏し、国会で演説したときだ。言動が「扇動的」だとして保守派議員の一部がボイコットした。フィガロは7月23日付社説でトゥンベリさんについて「歌詞のようにノンを繰り返し、地球を救う解決策は何も説明しない。温室効果ガスの大排出国の中国やインドに向かおうとせず、礼儀正しい米欧の指導者ばかり標的にする」と皮肉った。
一方、左派系紙リベラシオンは9月26日付社説でトゥンベリさんを擁護した。「彼女を感情的でうるさいと思う人、だれかに操られた若者だと考える人は気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新報告書を読むべきだ」と主張した。報告書は、地球温暖化による氷床の縮小と海面上昇を警告している。同紙は仏西部でも海岸線の浸食が進んでいることに触れ、「このメカニズムを理解するのに学位など必要ない。(トゥンベリさんを)あざける人は幼稚園に戻った方がいい」と論じた。
中道左派系紙ルモンド紙は9月29日付の論評欄で「指導者たちに横並び主義からの脱出を迫った」と、トゥンベリさんの行動を評価する政治学者の寄稿を掲載した。寄稿は各国が温暖化対策を約束しながら現状に安住し、取り組みが遅れていると指摘した。
(パリ 三井美奈)