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自衛隊の憲法議論急げ 大阪大教授・坂元一哉

ポスト「戦後」といってよい新しい時代(2月25日付本コラム参照)を迎えたいま、「戦後」最大の憲法問題、すなわち自衛隊は合憲か否かの憲法問題には、なるべく早く決着をつけたいものである。

安倍晋三首相は2年前の憲法記念日に、憲法9条の1項(戦争放棄)、2項(戦力不保持)をそのままにして、憲法に自衛隊を明記する、という憲法改正のアイデアを出している。この画期的なアイデアが実現すれば、いまでは国民の大方の合意がある自衛隊の合憲性を憲法上明確にできると期待したが、国会での議論は進んでいない。

議論が進まない理由はいろいろだろうが、自衛隊をどう明記するかが案外難しいのもその1つかもしれない。というのも、いまの自衛隊には、自衛隊の名称はそのままでいいのか、いまの志願制は続けていけるのか、軍事裁判所は不在のままでよいのか、といったことなど、この組織の将来のために、あらためて国民的な議論が必要になっているところがあるように思えるからである。

そうした議論を自衛隊明記の前にした方がいい、ということなら、明記は2段階で行ってはどうかと思う。まずとりあえず、いまの自衛隊の合憲性を憲法に明記して「戦後」最大の憲法問題に決着をつける。そのうえで自衛隊そのものの明記は、ポスト「戦後」、つまり令和の憲法問題として引き続き議論していくというやり方である。

そういうやり方の場合、合憲性の明記は、全部で103条ある憲法の条文の後に第104条を新設し、そこに、「この憲法のいかなる条項も自衛のための実力組織の保持を禁じるものではない」といった文言を書き込めばいいだろう。

文言は一例だが、大切なことは、新条文の文言によってはじめて自衛隊が合憲になったという議論を生じさせないことである。そのためこの例では、自衛隊を合憲とする政府の憲法解釈を確認する趣旨の文言にしている。そういう文言なら、自衛隊が憲法違反で「ない」ことも、「なかった」ことも明確にできるだろう。

憲法の改正についてはいま、自衛隊明記だけでなく、緊急事態への対応や教育無償化など、さまざまな問題でその必要が論じられている。それらの改正問題については今後よく議論を重ね、国民の合意ができたものから、105条、106条と付け加えていけばいいと思う。

ただ憲法に関する今後の議論は、「改正」だけでなく「護持」の問題にも相当の力を入れねばならない。憲法の最も大事な条文であり、日本の歴史文化と民主主義を調和させる憲法第1条に関し、皇位の安定的継承をいかに長期的に護持していくかという問題である。

そのことも含めて、令和の憲法問題は、昭和、平成のそれに負けず劣らず政治のエネルギーを費消するものになるだろう。長い間、憲法問題の中心になってきた、自衛隊の合憲性に関する議論の決着を急ぐべきと考える理由はそこにある。(さかもと かずや)