台風19号

長野・飯山の商店街、「再開のめど立たない」浸水被害で廃業も

浸水被害を受けた長野県飯山市の市街地。1週間以上たっても使えなくなった家財の搬出などが続いている
浸水被害を受けた長野県飯山市の市街地。1週間以上たっても使えなくなった家財の搬出などが続いている

 台風19号の影響で千曲川の支流である皿川が氾濫し、市街地の商店街が浸水した長野県飯山市では、1週間が過ぎても被害の生々しい爪痕がいまだに残り、廃業を決めた店舗も出始めた。同市は県内の自治体の中でも少子高齢化が深刻な状況にあり、街の衰退に拍車がかかりかねないと市や関係者は危機感を募らせている。

 市内の中央を貫く本町通りの商店街には精肉店や衣料品店、金物店などが並ぶものの、皿川の氾濫で多くの店が浸水被害を受けた。流れ込んだ泥を水で洗い流す作業などに追われ、各店舗は営業を再開できる状況にはなく、買い物客の足は途絶えたままだ。

 島田和彦さん(57)が営む飲食店も椅子席のあるフロアはもとより、一段高い座敷の小上がりまで浸水。冷蔵庫、製氷機、トイレなどが全て水浸しになり、使えなくなった。島田さんは「店内を乾燥させた後、消臭もしなければならない」と不安を隠さず、「営業は年内に再開できるレベルになく、めどが全く立たない」と顔を曇らせた。被害を受けた店舗が多いため近隣の建築、電気設備などの業者には修理の依頼が殺到。「順番待ちですぐには直してもらえない」と島田さんは嘆く。

 「謙信ずし」(笹ずし)の店を経営する岩崎孝典さん(55)は、別の場所にある加工工場は難を免れたものの、近くの宅配業者がクール便を扱えない状態になり、「顧客から注文を受けても発送ができない」という。昭和時代に発行された初版の漫画本などを物置に保管していたが、約1千冊全てを廃棄処分せざるを得なかった。「大切なコレクションが駄目になったのも辛い」と、岩崎さんは肩を落とした。

 県によると平成30年10月1日現在、飯山市の人口は2万201人で県内19市のうち最も少ない。人口に占める65歳以上の割合(高齢化率)は37・2%と19市の中で2番目に高く、75歳以上の比率は20・5%と最も高い。これに対し、働き手の15~64歳の割合は52・1%と19市では最も低い。

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