ラグビーのワールドカップ(W杯)日本大会で南アフリカとの準々決勝に臨んだ日本。惜しくも4強進出はならなかったが、それでも堂々の8強入り。日本ラグビー界の新たな歴史を切り開いた。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)の下、技術と戦術を磨き、強豪相手の実戦経験を重ねてきた強化策が実った形だ。
■オフロードパス
FWの最前線で戦う男の代表初トライに、日本の成長が凝縮されていた。13日の1次リーグA組のスコットランド戦。プロップ稲垣啓太は「一番いい舞台で一番いいトライにしてもらった」とうなずいた。味方がタックルを受けながらオフロードパスでボールをつないだからこそ生まれたトライで、日本が目指してきた形だった。
1次リーグで「オフロードパス」や、近い位置の味方を飛ばして遠くにほうる「飛ばしパス」から日本はトライを量産した。いずれもチャンスを広げる武器になる一方で、逆襲される可能性も高い技。エディー・ジョーンズ前HC(現イングランド代表監督)が率いた前回15年W杯では原則禁止されていた。
しかし、ジョセフHCは「大胆なプレーが勝利に結びつくこともある」と、リスク覚悟の戦術を取り入れた。2月の代表候補合宿では、リーチ・マイケル主将が「ひたすらオフロード」と振り返るほどの反復練習に励んだ。
■スクラム強化
攻撃の起点となるスクラムが安定しなければ世界とは戦えない。ラグビーのセオリーだが、フッカー堀江翔太は「15年W杯より絶対に強い」。断言できるのは独自システムを鍛えてきたからだ。