浪速風

先人の治水の姿勢に学ぶ

いまはむかし、と平安後期とされる説話集「今昔(こんじゃく)物語集」は伝える。大きな川があった。「雨降(ふり)て水出(いず)る時には、量(はか)り無く出る河也(なり)」。沿岸住民は家の天井を頑丈に造り、洪水になると料理もそこでして過ごしたという。歯を食いしばって人々は水害に耐えた。

▶川の多い日本ではむかしから、治水は国を治める基本でもあった。戦国武将の武田信玄が甲府盆地を水害から守るため築いた信玄堤などは有名だろう。巨石を配し、岩の壁に流れをぶつけるなどして合流する川の水勢をそいだ。甲州流と呼ばれる治水対策である。

▶台風19号による被害が次々と明らかになり、暗い気持ちで過ごした週だった。被災地ではなお困難な状況が続く。一日も早い平安の回復を。そして凶暴化する気象災害への備えに国を挙げて取り組みたい。川の堤防の強化など課題は山積しているだろうが、たじろぐまい。信玄堤をはじめとする治水施設の完成には18年あまりを費やしたという。