台風19号

「廃業するしか…」途方に暮れる事業者ら 福島・本宮

すべての水が引いたのは14日になってからだった=15日、福島県本宮市(大渡美咲撮影)
すべての水が引いたのは14日になってからだった=15日、福島県本宮市(大渡美咲撮影)

 台風19号の大規模な浸水被害で、7人が犠牲となった福島県本宮市。住民らは泥だらけになった住宅や店舗、工場などの清掃に追われている。本宮市では阿武隈(あぶくま)川と、その支流の安達太良(あだたら)川が氾濫、市街地の広範囲に被害が及んだ。「廃業するしか」「これからどうすれば…」。商店や工場の経営者は途方に暮れている。(大渡美咲)

 「午前0時過ぎてから水の勢いがものすごくなって午前3時くらいには1階は全部駄目でしたね」。布団店を営む森田陽助さん(83)は台風19号が近づいた12日、商品などを2階に上げていたが、途中でやめて2階に避難した。

 長女、ヤス子さん(53)の夫が12日午後10時過ぎに、自宅近くの阿武隈川まで様子を見に行ったところ、水位はかなり上昇。家に戻る途中、あちこちのマンホールから水があふれ出していた。2時間後から水が徐々に1階の店舗部分に入り、あっという間に1階をのみ込んだ。

 水はなかなか引かず、冷蔵庫などの家財道具が浮かぶ様子を「見ているしかなかった」という。建物から水がなくなるまでに2日くらいかかった。

 何度も水害に見舞われてきた地域で、森田さんは事前に車を避難させるなど対策を講じていたが、今回は想定以上だった。商品の布団は水につかり、廃棄せざるを得ない。「再開のめどは立たない。廃業するしかない」と肩を落とす。

 市の中心部でボイラー会社を営む渡辺秀隆さん(62)も事務所と工場が浸水した。事前に移動できる機械などは別の場所に移しておき、水が引いた14日に事務所を訪れたが、移せなかったトラックとパソコン、機械類は全部駄目になった。「これからどうするかはまだ先です。とりあえず被害状況の確認からです」。渡辺さんも途方に暮れた。

会員限定記事会員サービス詳細