千曲川の氾濫では、気象庁の度重なる注意喚起に加え、自治体の呼びかけにも反応し、早期に避難し自宅が被災しながらも負傷などを免れた住民が多かった。一方、逃げ遅れた住民も出て、避難行動の難しさを突きつけた。「普段からハザードマップを確認するように」。専門家は警鐘を鳴らしている。
気象庁が長野県に大雨特別警報を発令したのは12日午後3時半。長野市は午後6時には決壊した穂保地区に避難勧告を発令し、午後11時40分には指示に切り替えた。千曲川が氾濫したのは13日午前1時15分。その後、堤防が決壊し、地区を濁流が飲み込んだ。
地区に住む、佐藤陽子さん(68)は12日午後8時半ごろ、避難所に向かった。「いつもと変わらないくらいの雨」と思ったが消防の呼びかけや近隣の状況を見て決断したという。
別の女性(78)は雨が激しくなる中でも「家まではこない」と踏んで自宅にとどまった。結果、1階が完全に浸水。13日午前に消防に救助された。田中充さん(93)も「決壊しない」と考えていたが、息子に促され、13日午前1時に避難所に逃げ込んだ。越水は、その直後だった。
市が作成したハザードマップでは、穂保地区など市北部で予想される洪水の浸水は最大10メートル以上。また千曲川は、これまで何度も氾濫を繰り返し、市は注意喚起してきた。