台風19号の影響で秋山川が氾濫し、大きな被害を受けた栃木県佐野市赤坂町。13日のうちに水が引かず、わが家の被害の大きさを一夜明けた14日に初めて確認した住民は、「もう完全に元の生活には戻れないのかもしれない」と頭を抱えた。
秋山川から流入する濁流の影響で、13日は1日中自宅の2階から出られなかったという男性(75)は水が引いたこの日、ようやく自宅の惨状を知った。男性は「1階は全て水没してしまった。道路などは市や国が片付けるのだろうが、家の中は誰もやってくれない」と、悲痛な面持ちで語った。
13日のうちに浸水が落ち着いた住民はこの日、家を襲った泥水を掃除する作業に追われた。決壊した堤防の修復工事が進み、濁流の流入が止まり水は引いたものの、依然として町は一面泥に覆われた状態。断続的に降る雨の影響もあって作業は思うように進まず、イライラが募った。住民らはシャベルを手に泥を掻き出したり、ホースで敷地を洗い流したりしていた。
近くの公園にはボランティアによる臨時のがれき置き場が開設され、住民らが浸水で使えなくなった家財道具などを運び込んでいた。自転車のかご一杯のがれきを持ってきた主婦、須藤ます子さん(78)は「玄関近くに置いていたものは全てだめで、物置も全滅していた。車もなく自転車で運ぶしかない」と、疲れ切った表情で話した。
同市ではピーク時、4000人以上が避難所に身を寄せていたが、14日午後4時現在、市内の避難所は1カ所のみで54人が避難生活を続けている。(根本和哉)