各地で記録的な大雨をもたらした台風19号の影響で、関東甲信越地方の河川上流にあるダムでは12日夜から13日未明にかけて次々と緊急放流を実施した。緊急放流はダムが洪水調節機能を喪失する事態。下流域で水位が急上昇する恐れもある。
台風19号がもたらした温かく湿った風の影響で、関東甲信越の山間部を中心に10日から雨が降り続けた。気象庁によると、48時間雨量が神奈川県箱根町で1001ミリ、静岡県伊豆市で760ミリ、埼玉県秩父市で687ミリ、東京都檜原村で649ミリといずれも各地点での観測史上1位の値を更新した。
関東地方整備局は12日夜、利根川水系神流(かんな)川の下久保ダム(埼玉県神川町)で緊急放流(異常洪水時防災操作)を行う可能性があると発表。その後、次々と各地のダムで同様の発表を出した。
今回、関東甲信越で12日夜から13日朝にかけて緊急放流を行ったのは、美和ダム(長野県伊那市)▽竜神ダム(茨城県常陸太田市)▽水沼ダム(同県北茨城市)▽城山ダム(神奈川県相模原市)▽塩原ダム(栃木県那須塩原市)-の5カ所。緊急放流との関係は不明だが、水沼ダムの下流域にある茨城県北茨城市の大北川で越水が確認された。
他にも、中禅寺ダム(栃木県日光市)など数カ所では、緊急放流の可能性があることを周知した後、水位上昇が収まったため、実施されなかった。関東地整が最初に可能性があると発表した下久保ダムでも行われなかった。
緊急放流は大雨でダムの貯水量が急激に上がり、事前に行っている洪水調節が間に合わない場合、決壊してあふれ出すのを防ぐために流入量と同量を放流する緊急措置で「例外中の例外」とされる。昨年7月の西日本豪雨では6府県の8カ所で実施された。
西日本豪雨では上流のダムで緊急放流が行われた愛媛県西予市で、河川が氾濫し700棟近い住宅が全半壊もしくは浸水し、5人が死亡した。