台風19号の接近に伴い、スーパーや携帯電話販売店は、早々と12日の休業を決めるなどの危機対応を講じた。従来は「顧客重視」の観点から、台風が近づいても開店する努力をしてきた各社だが、交通機関の計画運休などで従業員が出社できないなどの物理的制約と併せ、企業の意識が収益重視から安全重視に傾いていることも、計画休業の動きを強めている。
百貨店では三越伊勢丹が三越日本橋本店などの臨時休業を前日までに決めたほか、高島屋や大丸松坂屋百貨店なども同様の動きを見せた。スーパーのイトーヨーカ堂が100店舗以上の休業を発表したのも前日の早い時間帯だ。ソフトバンクは、東京都など23都府県で携帯電話の販売店を臨時休業にしたが、広域で災害に備えて一斉休業したのは初めてという。
「24時間営業、年中無休などのルールを死守するという企業や社会風土は変化している。休業に対する企業の抵抗感も低下してきた」。第一生命経済研究所の熊野英生首席エコノミストは潮目の変化を語る。現場でも「これまで社会的責任として営業継続にこだわってきたが、最近は従業員への配慮を重視する空気がある」(スーパー)という。
先月の台風15号による甚大な被害がまだ記憶に新しい中、「大きな被害がある程度見えている災害に対しての計画的な休業は、「社会全体の動き」(通信大手関係者)として容認する流れが強まった。大手百貨店の担当者は「交通機関の計画運休で判断の見通しが立てやすかった」と話す。
MS&ADインターリスク総研の山口修(おさむ)主席コンサルタントは、「ここ数年、企業の間で、災害のレベルに応じて事前に対応を決めておき、早め早めに判断するという動きが広がっており、こうした流れは今後も定着していく」と語る。