正論11月号

私は拉致されかけた! 都庁職員が40年前の体験を激白 「正論」編集部 溝上健良

 すると少し先の、カーブを曲がった先に白いスカイラインが横向きに、国道をふさぐように止まっていた。やむを得ずAさんは、相手の車の十メートル以上手前で停車。相手の車からは、運転手一人だけが降りてきた。男は短髪で、身長は一六〇センチかそれ以下。作業着のような地味な服を着て、サンダル履きだった。Aさんの車に近づくと、早口で何か叫ぶように話した。

 外国語のようで聞き取れなかったAさんが車の窓を十センチほど開けると、いきなり相手が顔面を殴りつけてきた。

 「事件後しばらく経って病院に行ったら鼻の骨が折れていたのですが、あのわずかな隙間からそんな威力のあるパンチを出せることは驚きでしかない。相手の肩のあたりから、まっすぐ拳が飛んでくるような感じでした。まさに訓練されたプロの仕業。もし一般人だとしたら、空手の達人かボクサーかでしょう」とAさん。

 隣に乗っていた女性もAさんが殴られたことに気づかないほどの早業だった。一瞬、気を失ったAさんだったが、相手の男が車のドアを開けようとするガタガタという音で意識を取り戻した。幸い、ドアにはカギがかかっていたため開けられずに済んだ。

 すると今度は、男が窓の隙間から手を入れて、Aさんののどを絞めてきた。とっさの判断でAさんは車を急発進させた。男の手をふりほどき、道路脇の縁石に乗り上げて、相手の車の脇をすり抜けた。しかし相手の車もすぐに後を追ってくる。必死で逃げた。

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