鳥取市郊外にある緑豊かな公立鳥取環境大学のキャンパスの一角で、5匹のヤギが暮らしている。学校のパンフレットに登場する大学の顔。飼育するのは全国でも珍しい「ヤギ部」の学生たちだ。ヤギをめでるのが主な活動で、春になると入部希望者が殺到するというヤギ部。開学とともに産声を上げた部活の誕生は、大学教授がふと漏らした一言がきっかけだった。
部員80人の大所帯
校舎前、柵に囲まれた雑草の生い茂る野原。部員たちが内側に入ると、奥の小屋からヤギが口をモグモグ動かしながら出てきた。いずれも雌の白ヤギ5匹。最年長の「クルミ」が群れをまとめる。「メイ」は温和な性格で、「コムギ」はマイペース。メイの双子の娘「アズキ」と「キナコ」は人懐っこい性格だ。5匹はともに行動し、小屋と野原を自由に行き来している。
5匹を世話するヤギ部は、現在は約80人もの学生が所属している。農業系の大学ではないため酪農は行っていない。主な活動はヤギの世話をすること。年中無休で朝と夕方にエサや水を与え、小屋を掃除する。園芸用の剪定(せんてい)ばさみを使った爪切りは、4人がかりでの大作業になる。
ヤギの体調管理も重要な任務で、毛が抜けていないか▽体から出血していないか▽目やにが出ていないか-などを確かめている。
経営学部2年で副部長の小坪稔輝さん(20)は「動物と触れ合ってリラックスしたいと思った」と入部理由を明かす。
開学とともに産声
ヤギ部の設立は開学と同じ平成13年。顧問を務める環境学部の小林朋道教授(動物行動学)が開学直後の講義で、窓の外の造成中のキャンパスを見ながら「広大なキャンパスにはヤギが草をはんでいる姿が似合う」と冗談半分に話したのがきっかけだった。
学生たちはその話を本気と捉え、小林教授を顧問とし、部の設立を申請した。開学直後で一定数の部員と顧問がいれば部の設立が可能で、小林教授は「あとに引けなくなった」。
牧場から雌の小ヤギ1匹を譲り受けて活動を開始。部員たちは初代ヤギに「ヤギコ」と命名し、小屋を建てた。山から取ってきた草をエサとして与え、フンは堆肥にしたという。