朝晴れエッセー

ハンバーグ・10月3日

休日の昼、いつもは自宅で冷蔵庫にあるものでおかずを作って食事を簡単に済ませるのだが、前日にインスタグラムで掲載されていた「ハンバーグランチ」が気になり、わざわざバスに乗って、レストランに行った。

チェーン店であるこのレストランは家族連れに人気で、都心部や郊外にいくつもの店を構え、にぎわっている。

「今日はハンバーグを食べに行こうか」「うん!」

月に一度の外食。子供たちの喜ぶ姿がうれしかった。注文するのはいつものハンバーグプレート、スパゲティ、デザートはパフェを食べ、家族は満足して幸せな気分だった。その後、夫婦は離婚。妻と子供たちは出ていった。

残った私は気を強くして生活するが、時折、走らせる車から「ハンバーグレストラン」が見える度に家族で食事をしたことが思い浮かび、目の前が潤み、車を路肩に停車させ、気分が落ち着くのを待ったりもした。もうあの店には行けないだろうと思っていた。

あれから5年。いま、注文したハンバーグプレートが目の前にある。水を飲み、一口食べてみる。「いつもの味、あのときのおいしいハンバーグ」。胸が苦しくなったり、目が潤むこともない。淡々と食べる私がそこにいる。「成長したのか…」「何かを乗り越えたのか」

ホール担当の女の子が水を注いでくれる。ランチを完食した私は再びバスに乗った。車窓から生駒の山々が見える。

「またハンバーグいこな」。山の向こうにいる息子たちを誘っていた。

遠矢博昭 49 消防士 奈良市