虎番疾風録

ハンデ師疑惑「冗談やないで」 其の参79

虎番疾風録 其の参78

「事件」は突然、起こった。昭和54年12月27日、巨人の青田昇コーチと暴力団との〝黒い交際〟が発覚したのだ。発端は週刊誌の「サンデー毎日」が『青田巨人ヘッドコーチと山口組の関係』と題して掲載したインタビュー記事。その中で青田は暴力団組長との交際を認める発言をしていた。

連盟はすぐさま行動した。その日の午前には鈴木セ・リーグ会長が東京・大手町の巨人球団事務所に長谷川代表を訪ね「十分に調査して報告するように」と要望。長谷川代表も「深い付き合いなのか知り合い程度なのか…。それに時期もウチのヘッドコーチに就任した後、交際しているようなら野球協約に触れるのだが…」と語った。

野球協約(第百八十条)には、選手、監督、コーチ、球団の役職員または審判員が、野球賭博常習者と行動を共にし、彼らを饗応(きょうおう)し、あるいは彼らからの饗応を受けた場合、1年間の失格、職務停止などの制裁を科す-とある。

暮れも押し詰まっての不祥事発覚。〈巨人担当も大変やなぁ〉とひとごとのように思っていた。するとデスクから「青田の家へ行ってこい」の指令。なんと、青田の自宅は神戸市垂水区にあった。先輩記者と神戸に向かった。

夜、青田邸で緊急会見が始まった。

「忘年会の帰りでかなり酔っていた。そこへいきなり『ハンデ師やろ』と決めつけられたんで、カーッときてつい、きつい口調でしゃべってしまった」

――ハンデ師の疑惑は

「冗談やないで。プロ野球で飯を食っている者にとって最大の罪悪は野球賭博や。するわけないやろ」

――組長との付き合いは

「付き合いというほどやない。タイガースのコーチをしとった昭和38年ごろかなぁ、神戸の寿司(すし)屋で食事をしてたら、向こうから名乗りながら話しかけてきた。組関係とはそりゃあ、感じでわかるがな」

――その後は

「ゴルフ場でたまに出会った。食堂でコーヒー飲んだよ」

――隠さないんですか

「隠してもしゃあないやろ。それこそヘタに疑われる。ボクは変な交際なんてしていないし、悪いことをしているとはまったく思ってない。性分として知り合いにあいさつされて、顔をそむけるようなことはせえへんよ」

このときの青田はまだ、これが「大騒動」になるとは思っていなかったようだ。(敬称略)

虎番疾風録 其の参80

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