朝晴れエッセー

祖母の梅干・10月2日

連日の猛暑で食欲が落ちた。妻が見かねて「梅干」を買ってきてくれたが、甘酸っぱくて旨いとはいえない。

箸をとめると、子供の頃食べた「祖母の漬けた梅干」が思い浮かんだ。

祖母は病弱であったが、寡黙で気骨ある大正女で、なにくれと私の面倒をみてくれた。

中学生の時、忙しい母に代わって祖母が弁当を詰めてくれた。弁当には決まって梅干が入っていた。祖母の漬けた梅干は、塩が吹き出ている辛い物だったが、白いご飯に合い、ついつい食べ過ぎてしまった。ご飯を何杯もおかわりし、毎日食べても飽きることはなかった。私は梅干が大好物になり、食事には欠かせないものとなった。

ある日、弁当を開けると、梅干が入っておらず、好みのおかずもなかった。祖母が入れるのを忘れたのである。

帰宅した私は、声高に祖母をなじったが、祖母は終始無言だった。祖母は怒って翌日は弁当を作ってくれないと思った。

だが、翌朝、卓袱台(ちゃぶだい)には弁当があった。

私は昼になり弁当を開け、周りがびっくりする程の声を上げた。なんと、ご飯の中が梅干だらけで、十数個も入っていた。無口な祖母らしい怒りの表現だった。

数年後、祖母は持病であるリウマチが悪化し、63歳で他界した。リウマチのこわばる手で弁当を作ってくれたことやさまざまな優しさに感謝の思いを伝えられなかったことを悔やんだ。

先日来、梅干を口にするたびに祖母が思い出され、思わず微笑んでしまう。

小出 良一 65 アルバイト 大阪府貝塚市