県教育局は今年度からAI(人工知能)を活用し、児童・生徒一人一人の学力に合わせた指導の実現を目指す。国内外で高い評価を受けている「県学力・学習状況調査」の蓄積データをAIで分析し、児童・生徒の学習状況に応じた個別のアドバイスシートや教材を作成する。県教育局はAIの有効活用で「学び」の高度化を図る。 (黄金崎元)
県教育局は平成27年度から「県学力・学習状況調査」(さいたま市を除く)を実施している。県内の公立学校に通う小学4年から中学3年が対象で、4月に実施した今年度の調査では約29万人が挑んだ。
この調査は、学力の伸びを継続的に把握できるのが特長で、「学習到達度調査(PISA)」と同様の手法を採用。正答率などに応じて問題の難易度を設定しているため、個人や学校ごとの学力の伸びを測定できる。経済協力開発機構(OECD)のアンドレアス・シュライヒャー教育・スキル局長は6月に都内で開かれた国際シンポジウムで、県の調査を「世界水準の事例」と絶賛した。
県教育局は5年間にわたって、この調査を実施してきたが、さらにAIを活用し進化させる。小松弥生県教育長は「かなりビッグデータが集まってきた。今年度は文部科学省の予算を活用しながら、AIを活用したい」と意気込む。
具体的には、県に蓄積されている調査のビッグデータと、定期考査や生活習慣アンケートなど小中学校が保有するデータをAIで分析する。「過去や現在の学習のつまずきの把握や、多くのデータパターンから将来の学力状況などを把握したい」(八田聡史県義務教育指導課長)という。
AIの分析結果については、学力向上や生活習慣などの改善事項を個別に提示するアドバイスシートの作成を視野に入れている。このほか、個々の理解度に合わせた練習問題の提供など個別学習教材の作成や、保護者との進路に関する面談での活用を目指す。
県教育局は県学力・学習状況調査に加え、AI活用で、全国に先駆けた事例をつくり指導の充実化を図りたい考えだ。