朝晴れエッセー

猫のももちゃん・10月1日

それはわが家の台所の改修工事をしているときのことでした。天井板をはがし、はしごをかけ、大工さんが出入りしているとき、外で時々見かける白い野良猫が、生まれたばかりの子猫をくわえてはしごを上り天井裏に消えました。

困った私が大工さんに探してもらいましたが見つからず、エサと水を天井裏においても一向に食べた様子がありません。

そして1カ月。とうとう天井をふさぐときが来て、もう一度、念入りに探してもらいましたが、いません。板を張り、念のため二階の畳を1枚上げておいてもらったところ、やせほそった親猫が丸々と太った三毛猫をくわえて階段を下りてきました。お茶を飲んでいた私たちの前に置き、自分は外に出てそれっきり、二度と姿を見せませんでした。

うちの子供たちは無類の猫好き。始終捨て猫、迷い猫を拾ってきて飼わされましたが、そのときもうちには4匹の兄弟猫がいました。それでも夫が、「これもついでに飼ってやれ。母猫があれほど命がけで育てた猫だ」というので、子供たちが「ももこ」と名付けて飼いました。遠慮深い猫でどんなにおなかが空いていても他の猫が食べ終わるまで我慢して待っていました。

外の門柱の上が好きでいつもそこに座り、通る人を眺め、「ももちゃん、おはよう」「ももちゃん、ただいま」と声をかけられると必ず「ニャー」と返事をするので、すっかりご近所の人気者になり、猫には珍しく24年も生きました。

母猫が命がけで育てたからでしょうか。思い出深いかわいい猫でした。

伊藤いと子 89 東京都調布市