茂木外務相、大幅譲歩の指摘に反論「関係者が評価」 日米貿易協定

閣議に臨んだ茂木敏充外務相(左)ら=1日午前、首相官邸(春名中撮影)
閣議に臨んだ茂木敏充外務相(左)ら=1日午前、首相官邸(春名中撮影)

 茂木敏充外務相は1日、閣議後の記者会見で、25日(日本時間26日)に最終合意した日米貿易協定の内容について日本が譲歩し過ぎているとの指摘について、「農業関係団体や日本自動車工業会、経団連、日本商工会議所などから評価をもらっている」と反論した。野党側は「自動車の関税撤廃をできず、農産品の市場開放をし過ぎた」などと批判。茂木氏は「丁寧に説明していく」としているが、臨時国会での承認審議が長引く可能性も出ている。

 同日の自民党部会でも、茂木氏は、「関係している人が評価しているからこそウィンウィン(相互利益)だ」と強調した。出席した自民党議員からは、「国民に納得できる内容」などと評価する声がほとんどだった。

 今回の交渉で、日本にとって最大の懸案だったのは自動車分野。米国にとって対日貿易赤字の最大の要因で、米通商拡大法232条による高関税の発動を検討。最大25%の追加関税を課す恐れがあったからだ。

 現在の2・5%の関税については、米国が離脱前の環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)で25年かけてゼロにすることが決まっていたが、交渉が長引けば、「(関税撤廃は)50年、100年後と、トランプ米大統領が言いかねない」(政府関係者)と判断。極めて長期間の関税撤廃に全力を注ぐよりも、追加関税や数量規制の回避を優先した。

 農産品については、日本は米国が重視する牛肉、豚肉、小麦の市場をTPP水準まで開放した一方、関税撤廃の品目を削減。品目ベースの関税撤廃率は、TPPの82%を大幅に下回る37%にとどめた。米国産コメの無関税輸入枠の導入も見送った。政府関係者は「日本は勝ち取ったと言ってもいい」と成果を強調する。

 昨年9月の首脳会談の共同声明では、日本側は米国産の農産品の関税引き下げについて「TPPの水準が最大限」と盛り込み、米国側は、日本製の自動車輸入について「交渉結果が米国の自動車産業の製造および雇用の増加を目指すもの」と明記。その意味では、日米とも思惑通りの結果となった。

 だが、日本側は自動車分野で追加関税と数量規制の「回避」しか勝ち取れなかったとも取れる。来年にもサービス・投資分野に関する新たな交渉を開始するにあたり、今回の交渉を再検証する必要がありそうだ。

 一方で、政府は協定発効に備え、農業分野を中心とした国内対策を実施するための基本方針を決定。海外展開の後押しや、国内産品の新たな市場開拓を促す。安倍晋三首相は、1日の対策会議で、「強い農林水産業の構築にしっかり取り組む」と述べた。

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