入隊して以来35年間、隊員食堂で延べ1千万食の献立を管理栄養士として作ってきた。「1日400~500人の隊員が食堂を利用する。アンケートではその8割が満足と答えてくれている。本当にうれしい」と顔をほころばせる。
県立広島女子大(現県立広島大)を卒業後、添加物など食品を分析する仕事を経て、昭和60年に地元の岩国航空基地隊に入隊した。
隊員の半数は20代と若い。心掛けているのは食事を通しての士気高揚と健康の維持・増進という。
「隊員の業務はハードでトレーニングも怠らない。一般成人よりも多い1日約3300キロカロリーの栄養量はもちろんのことだが、食べて十分な満足を得られないと士気もあがらない」
日々の献立はマンネリ化しないように郷土料理をアレンジした「ご当地メニュー」や、調理員のアイデアを生かしたものなど最大の工夫を凝らしている。食の重要性も発信し、まさに、「食育」で隊員の体と心を守ってきた。やりがいのある仕事でもある。
「隊員の体と心の健康を守っているということは、日本の平和の一翼を担っている。そんな気持ちもある」。控えめだが小さくうなずきながら答えた。
来年3月には定年を迎える。周囲からは「裏方での積み重ねが今の部隊の活躍につながっている」と高い評価を受けるが、35年間を振り返り、「いろんな献立を調理してもらった調理員さんに感謝している」。仲間を思う優しい人柄がにじみ出ていた。(野瀬吉信)=随時掲載