ヘリポート夜間照明開発へ ダウンウォッシュ耐久性実証 24時間運航で災害対策強化

ヘリポート夜間照明開発へ ダウンウォッシュ耐久性実証 24時間運航で災害対策強化
ヘリポート夜間照明開発へ ダウンウォッシュ耐久性実証 24時間運航で災害対策強化
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病院・介護施設での食事サービスを提供する日清医療食品(東京都千代田区)は、ドクターヘリ運航などを手がけるヒラタ学園(神戸市)、岐阜大学(岐阜市)と共同で、持ち運び可能な「ヘリポート夜間照明」の開発プロジェクトを進めている。持ち運びを容易にするためには、なんといっても軽量化がカギだが、軽すぎるとヘリコプターの着陸時の強烈な風(ダウンウォッシュ)で吹き飛ばされてしまう懸念も高まる。「軽いのに風に強い」。この一見、矛盾する命題を実現できるのか-。3者は京都府亀岡市総合防災訓練の一環として、『ダウンウォッシュ耐久実証訓練』を9月7日、保津橋桂川左岸河川敷(保津町)などで実施し、この強風への耐性を検証した。ヘリの夜間運航が法律で制限されるなか、日清医療食品が視野に入れるヘリの24時間運航サポートは、防災・救急医療体制を飛躍的に強化する効果があるため、期待が高まっている。

ヘリ夜間運航の課題に挑戦

ヘリは、操縦士(パイロット)がほかの航空機や障害物を目で確認して、衝突を回避しながら飛行する「有視界飛行方式」で運航する。だから、フライトは天候に左右されるうえ、夜間(日没から日の出まで)は、航空法の基準を満たした照明設備がない場合は離着陸が原則禁止されている。

離着陸するヘリポートの夜間照明は通常、電気工事を伴う常設型だが、整備には1カ所で約1千万円の整備費用がかかる。このため、多くの自治体や病院のヘリポートは夜間照明が整備されておらず、24時間ヘリ運航ができないままとなっている。

また、災害の際に使用される河川敷やグラウンドなどの場外離着陸場(臨時ヘリポート)は、測量や土地所有者の承諾とともに、国土交通省への申請を経て、ようやく使用が可能になり、照明設備を事前に整備しておくことは難しいという。

日清医療食品では、震度6以上の地震発生で災害対策委員会を発足させるなど、災害時の迅速な対応に力をいれている。有事の際には支援物資をヘリコプターで搬送するため、ヒラタ学園と提携していたことから、こうした課題に対する意識を共有してきた。そして、福祉分野で活躍するロボット開発などに取り組む岐阜大学工学部機械工学科の松下光次郎准教授らの研究チームが協力することで、これらの課題克服への機運が高まった。

重量1個3キロ以下。持ち運び可能

開発した夜間照明はLEDで、緑色が境界誘導灯、オレンジ色が境界灯。電源不要な乾電池式で、照明1個の重量は約3キログラム以下。高さは約5センチで薄型にした。40平方メートルの広さが確保された臨時ヘリポートの着陸帯が分かるように、4辺や進入路に平均16個を配置する。キャリーケースに入れることを想定して、重さは備品なども含めて計50~70キログラムにしており、1人でも運搬設置が可能だという。

照明はリモコンスイッチで離れた場所からの点灯が可能で、上空のヘリから無線で操作することもできる。安全面に考慮して、供給される電気は2系統に分離。これによってトラブル発生時でも全部の照明が消えてしまう状況を回避している。

救急車などに照明セットを搭載して、着陸地点に運び込んで照明を設置できるため、ヘリコプターと地上スタッフが連携して、患者搬送をスムーズに行うことができるようになる。

一方、課題は持ち運びの利便性を追求したことによる軽さだった。ヘリは着陸時に、翼(ローターブレード)の回転によって、下方向に秒速15メートルものダウンウォッシュと呼ばれる風が生じる。気象庁『雨と風の階級表』によると、風に向かって歩くことはできず、転倒する人も出るという。軽量化を実現すればするほど、照明は強風で吹き飛ばされるリスクが高まる。「強み」は「弱み」にもなりうるというわけだ。

研究チームでは、照明の形状を空気抵抗が少ない六角形にし、四角形の土台に配置。高さも約5センチにして、風による影響を極力低減する工夫を凝らした。

照明セットの納入先はヘリポートのある自治体や病院などを想定、2020年1月からの販売を目指している。価格は1セット約130万円程度になる見通しだという。すでに10セット以上の受注があるという。

ダウンウォッシュへの強度十分

この日行われた亀岡市総合防災訓練は、「多様化する災害への対応力強化」がテーマ。台風接近に伴う豪雨の影響で午前6時半過ぎから、大雨・洪水警報、記録的短時間大雨情報、土砂災害警戒情報が断続的に発表され、同市内に避難勧告(レベル4)を発令。さらに、8時には「亀岡断層を震源する震度6弱の地震が発生し、周辺道路が寸断され、陸路による物資輸送が困難に陥った」との想定で実施された。

日清医療食品のヘリは地震発生直後、緊急支援物資として栄養価が高い液体状の濃厚流動食を運搬するため、神戸空港から亀岡市へ向かって離陸した。

このころ、岐阜大研究チームは照明が入ったキャリーケースを運び込み、臨時ヘリポートの設置作業を開始。照明の試作機に電池を入れ、主進入側に5個、進入左手に3個の境界誘導灯、ヘリポート全体が分かるように、8個の境界灯を配置した。離れた場所からの点灯実験も行い、わずか15分程度で設置作業は完了した。

ヘリは10時過ぎ、臨時ヘリポートに無事に到着。待機していた亀岡市職員らが、ヘリから支援物資を運び出し、車に乗せる訓練を行った。

松下准教授は、「ダウンウォッシュによって、吹き飛ばされたり、動いてしまった照明が一つもなく、持ち運びの簡便さと風への強さの双方を実現するいいバランスだと思う。今回の着陸地点は砂利だったため、風で小石が飛んでいるのが見えたが、照明の破損もなく、強度も十分」と分析した。研究チームの学生の一人も「実際にヘリを飛ばして実証訓練できる機会は少なく、貴重な情報を得られた。(今回のような)日中の河川敷のような環境では、草むらの中に置くと照明は隠れてしまい、見えにくい部分もあるようだが、夜間の場合なら(照明の)光はよく見えるだろう。照射面の角度など、改良を重ねていきたい」と振り返った。

また、ヒラタ学園航空事業本部業務部の小笠原健太課長は、「ヘリの課題はやはり夜間飛行。しかし、災害はいつ起こるか分からない。緊急時に迅速な対応ができる体制を整えていく。企業や大学の連携によって、可能性が広がっていくことは重要だ」と指摘する。

ヘリ活用で、災害時も食事サービス提供

亀岡市総合防災訓練には、京都中部広域消防組合亀岡消防署をはじめ、京都府警亀岡警察署、京都府警本部航空隊、陸上自衛隊第7普通科連隊、亀岡市医師会など約50団体が参加した。

避難所開設・運用をはじめ、来場者全員が危険回避を行うシェイクアウト、応急給水・配水管復旧、無人航空機ドローンを使った被災地情報収集、土砂災害集団救出・救助など、幅広い有事に対応した本格的訓練を繰り広げた。

また、市民らも大勢参加し、バケツリレーによる初期消火活動や避難所でのエコノミークラス症候群の予防訓練にも取り組み、「市民が自ら考え、自ら行動する」意識を醸成した。

日清医療食品総務本部総務部広報課の神戸修主任は、「ヘリを運航するだけではなく、物資を車両に積み込んでいく流れもスムーズに訓練できた。災害時でも食事サービスを提供できる状態を模索し続けることは会社の使命でもある。ヘリの離着陸を支援する夜間照明の開発によって、よりスムーズに物資を届けられるよう尽力していきたい。さらに、多方面の防災体制の充実や災害対応のヘリコプターの運航拡大などにつながっていけばいい」と話している。

(提供:日清医療食品株式会社)