劇場型半島

韓国で反日は「ちょっといいこと」 不買運動が続く本当の理由

韓国で日本製品の不買や日本旅行のボイコットが、「長続きしない」という当初の一部予測を覆していまだ衰えない。日本政府の輸出管理厳格化に反発して始まったはずが、日本が措置を撤回しても続けるとの声も多い。特定の衣料ブランドや日本製ビールなど、ターゲットに偏りがあるのも特徴だ。日本製品の不買をめぐる韓国人の消費行動を観察すると、韓国社会における「日本」の存在感がよく見えてくる。(ソウル 桜井紀雄)

割引から外れた日本製

日本の観光庁は、8月に日本を訪れた韓国人が30万8700人で、前年同月に比べて48%急減したと発表した。日本の主要各紙がこのニュースを1面で報じると、今度は韓国メディアがそれを大きなニュースとして扱った。

日本の「不当な報復措置」に対する韓国国民の自発的な不買や日本旅行拒否は、日本メディアが深刻に受け止めるほど影響を与えており、日本政府は早く措置を撤回すべきだ-と強調したい意図が垣間見える。

日本旅行と並んで、不買の影響が顕著なのが日本製ビールと日本車の販売だ。輸入ビールの中で、日本製は一番人気を誇ってきたが、韓国メディアによると、8月の輸入額は前年同月比で97%も急減。日本車の販売台数も57%減った。

不買運動でよく引き合いに出されるのが、衣料ブランドのユニクロで、カードの決済状況から売り上げが約7割減ったと報じられている。不買運動は「長期継続するとは考えていない」というユニクロ側役員の発言が火をつけた面もあるが、日本製品を象徴するブランドとしてそれだけ韓国で定着していた裏返しでもある。

ビールの不買について、韓国紙の朝鮮日報は、法律でインターネット通販での購入ができず、コンビニエンスストアや量販店など「公の空間」で買う必要があることに注目。このため消費者は、「他人の目を意識せざるを得ない」と指摘した。

店側が日本製を特価販売したところ、「国民の不買運動の対象でもうけようとしている」と非難を浴び、大手コンビニなどがそろって500ミリ缶4本で1万ウォン(約895円)といった通常の割引対象から外してしまった影響も大きい。「割引なし」の日本製と、「割引あり」で格安の他の国の商品が棚に並んでいれば、よほど日本製好きでなければ、それ以外の商品を手に取るだろう。店側が消費者の批判に屈した結果だ。

自動車については、高い買い物だけに、反日感情から車体に傷を付けられでもしたら…という意識も働いたようだ。

周りの視線が怖くて…

「チケットがとても安いから日本に初めて遊びに行くけど、周りには絶対言えません」。不買運動が最高潮に達していた8月中旬、若い韓国人女性がこう話していたのが印象的だった。

このご時世に日本旅行に行くのは後ろめたい行為で、旅行写真をネットにアップして自慢するのはもってのほかだという。

友人らとのグループ旅行ならなおさらで、一人が「いま、日本に行くのはちょっとね…」と言い出すと、日本は旅行先から確実に外される。

日本が輸出管理を厳格化した後に行われた世論調査では「日本製品を買うことがはばかられる」との回答が80%に上り、調査会社は、周囲の目を意識して購入を控える人もいると分析した。高校生を対象にした別の調査では、78・2%が不買運動に賛同したが、興味深いのは、そのうち約3割が「周りの視線が気になるため、日本製品をそっと購入して使う」と答えていたことだ。

韓国では「ヌンチ」という言葉がよく使われる。ヌンは目のことで、他人の視線や顔色を素早く読み取って振る舞うことを「ヌンチが速い」(気が利く)といって上手に社会を生きる能力とみなされる。皆がすき好んで不買をしているというより、ヌンチが怖く、大手を振って日本製品を手にできない事情も大きい。