習近平国家主席の来春の訪日が決まるなど日中関係は融和ムードにあるが、民間の経済協力を通じて関係の深化を目指すのであれば、共有すべき価値観を見極める必要がある。その意味で、自由で開かれた香港について中国がどう扱うのかを確認し、日本が「関心を持っている」と発信し続けることは極めて重要だ。
「雨傘運動」や今回のデモの原動力は、香港の将来に対する不安だ。「一国二制度」は50年間の「高度な自治」を認めているが、その後は北京が決めることになる。享受してきた自由を奪われることに懸念が強まっている。
米中関係が悪化する中、中国の隣の大国として「法の支配」といった普遍的価値を主張し続ける意義は決して小さくない。「関係改善のため、日本は香港問題で発言を控えている」と中国がとらえるならば、毅然(きぜん)と認識を正すべきだろう。
問題は東アジアにも波及する。来年1月に総統選が行われる台湾では現在、現職の蔡英文氏がリードしているが、中台が経済的・人的にさらに交流を深めることへの不安が香港問題を通じ広がったことも要因だ。香港の今後の展開も選挙情勢に影響を与えるだろう。(聞き手 時吉達也)