大阪の秋を彩るだんじり祭りを通じて、認知症の人や家族を地域で支えようという活動が、大阪府泉大津市から広がっている。その名も「だんじり認知症サポーターの輪」。医師の川端徹さん(56)が5年前に提唱し、参加者は2千人を上回った。だんじりを中心に世代を超えて結びついた住民たちが、みんなで見守る仕組みづくりを目指している。(小野木康雄)
FM番組で啓発
「ぜひ『オレンジリング』を着けて、町内を回ってくださいね」
9月19日夜、泉大津市にある「FMいずみおおつ」のスタジオから、川端さんの柔和な声が流れた。昨年2月から続く人気番組「Dr.トオルの認知症カフェ」。毎週木曜の午後8~9時、女性パーソナリティーと生放送で、認知症の啓発に取り組んでいる。
オレンジリングは、認知症の人らを支援する「認知症サポーター」の証しで、ゴム製の腕輪。この日は法被姿の川端さんをはじめ、ゲスト出演した下之町(したのちょう)のだんじり関係者3人も、手首にはめてオンエアに臨んだ。
その1人で青年団長の竹下義人(よしひと)さん(26)は「青年団が着ければ、若い子が認知症の人を気にかけるようになるし、支援について広く知ってもらうきっかけにもなる」と話す。
カッコいい貢献
川端さんは泉大津市で内科・脳神経内科の川端医院を営む。父の後を継いで平成20年に開業医となって以降、認知症の高齢者を多く診察してきた。
認知症の人が住み慣れた地域で安心して暮らすには、周囲の協力が欠かせない。そこで川端さんが注目したのが、毎年秋に市内の8町が参加して行われる「泉大津濱八町(はまはっちょう)だんじり祭」だった。
自身も物心ついたときには、祖母に連れられてだんじりの綱を引いていた。子供から高齢者まであらゆる年代が参加し、年間を通じて寄り合いがある「町人組織」の長所を、身にしみて理解していた。