これを聞いた自民党幹部は「知名度の高い小池氏に安保で同じ土俵に乗られたら、世論は支持してしまう。安倍首相は今から解散の判断を修正できないものか」と慌てていたことを覚えている。
当初は、複数の民進党議員が筆者の取材に「安保政策は与党と足並みをそろえ、内政面で勝負する。過去の反省を踏まえつつ、欧米型の成熟した2大政党制を目指せばいい」などと賛意も示していた。
しかし、その後は衆院選挙区をめぐる強引な候補者の当てはめや、政策協定書を「排除の論理」として嫌った議員の離反などのトラブルが頻発。稚拙な準備不足も露見し、結果的に与党が衆院選で「何もしないまま大勝」(党幹部)した。
民主党が下野してから間もなく7年が過ぎる。小池氏のもくろみは準備不足もあって稚拙だったが、現実的な安保政策が機能しかけたあの瞬間が、過去7年間で野党が最も政権の座に近づいたときだったといえる。
小手先の離合集散劇を繰り返す今の野党を見る限り、過去の教訓が生きているようにはみえない。だれに気兼ねしているのか分からないが、現実的な安保政策とは何か、真剣に議論を始める様子も伝わってこない。これでは与党がすっかり安心してしまい、日本の政治全体は緩むばかりだ。
(政治部次長 水内茂幸)