朝晴れエッセー

追憶・9月27日

そいつはある日突然いなくなった。生意気なことに私が学校に行っている間にいなくなったのである。

私の家には白いマルチーズがいた。名前はエールである。エールは一言でいうと間抜けで自分より大きい犬にじゃれに行き、返り討ちにあったり、自分の尻尾をおいかけて同じ所をくるくると回っていたりしていた。結局尻尾に口が届いたことは1度もない。エールは生意気で、名付け親の私よりも、気まぐれに構う父親に一番懐いた。もし私と父親が同時に名前を呼んだら父親のほうへ行くし、母親と遊ぶより父親とのほうが楽しそうだ。父親は戌年だから。なにか共感するものがあるのだろう、というのが家族のなかでの共通認識だった。実際に2人は友人どうしのようだった。私が風邪をひいたときは、うろうろと私の視界の端にでてきては心配なのか、悲しいのか妙な顔をしていたのに対し、父親が調子を悪くしているときには構わずじゃれにいった。一緒に寝ているのを見たとき、まるで兄弟のようだと思ったのは秘密だ。

そんな家族同然のエール。でもそいつはなんの前触れもなくいなくなった。犬なのに猫みたいだと思って後悔した。あれから5年。先日私はエールそっくりの犬に出会った。思わずまじまじと見て、落胆した。

生きていてほしい。でも、それと同時にもう会えないと思っている自分もいる。私はいまだにエールの死を感じながらも、完全にはそれを受け入れられずにいる。

西田 彩矢佳 17 高校生 兵庫県西宮市