W杯自国開催は、日本ラグビー界の悲願であった。われらが日本代表はプレッシャーのかかる開幕戦で素晴らしいスタートを切ったが、各開催地でも盛り上がりを見せており、長年ラグビーに携わってきた者として、とてもうれしい。
今回の日本代表はジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチの下、日本ラグビーの伝統であるパスとランを中心としたボール展開の速さに加え、正確なキックを駆使し「相手のスペース(穴)を素早く察知して合理的に攻略する」というスタイルを確立してきた。
大事な開幕戦であったロシア戦の後半28分、松島(幸太●(=朗の旧字体))選手のトライの場面などはその象徴的なもの。苦しい試合展開の中でも自分たちのスタイルを出せたことは間違いなく大きな収穫だと思う。
ただ、本当に大事なのはここからで、過去日本代表が実現したことのないベスト8進出のためには、次のアイルランド戦が大きな山場となる。アイルランド代表はフォワードとバックスの攻撃バランスが世界最高レベルのチーム。間違いなく今大会の優勝候補の一角だが、この強敵を倒すための準備は整っているはずであり、今の日本は、それを体現できる実力があると信じている。
私が大学4年生だった1995(平成7)年の南アフリカ大会で、日本はニュージーランドに歴史的大敗を喫した。その時まさか、日本でW杯が開催されるなど夢にも思わなかったし、日本代表は本当に強くなったと思う。アイルランドを翻弄する姿を思うと、今からワクワクする。
かつて20歳以下日本代表でコーチをしたときに共に戦った選手が今回の日本代表に数多く選ばれている。彼らの頑張りにも大いに期待したい。(平成7年度法政大卒、日本ラグビー協会リソースコーチ、東京ガスラグビー部ヘッドコーチ)