英仏独転向でイラン反米強硬派の勢い増す

 サウジアラビアの石油施設攻撃をめぐり、英仏独の3カ国首脳がトランプ米政権の「イラン責任論」に同調したのを、イラン側は裏切りと受け止めたとみられる。イランの反米強硬派がさらに勢いを増すのは避けられず、米・イラン関係は緊張をはらんだまま推移しそうだ。

 イラン外務省のムサビ報道官は24日、「(英仏独は)米国の弱い者いじめに対抗する力も意思もないことを示した」と述べ、サウジ攻撃の責任がイランにあるとした英仏独の共同声明を強く非難した。

 イランのロウハニ政権は、昨年5月に米国が核合意から離脱して以降、英仏独との関係維持に腐心してきた。米制裁のダメージを軽減するとともに、米国に政策転換を促すテコとしての役割を期待したからだ。

 しかし英仏独は今回、米国の主張に沿う形で、イランのミサイル開発の制限などを含む新たな枠組みを模索すべきだとした。イランからすれば、核合意の堅持を目指す「同志」だったはずの3カ国が、前言をひるがえした。もともと核合意に懐疑的だった強硬派は、これをロウハニ政権への攻撃材料とするだろう。

 イラン情勢に詳しいアジア経済研究所の鈴木均上席主任研究員は「外交舞台ではここ数カ月、米・イラン対話に向けた機運が醸成されつつあった」とみる。安倍晋三首相のイラン訪問や、大阪での20カ国・地域(G20)首脳会議、フランスでの先進7カ国(G7)首脳会議などを通じてだ。

 だが、サウジ攻撃で「すべてご破算になった」(鈴木氏)。攻撃がイランによる直接的なものか否かはなおも不明ながら、米国への安易な譲歩を拒む最高指導者ハメネイ師が、英仏独からさえ厳しい目を向けられる中での屈辱的な対話に応じるとは考えにくく、イランのとり得る選択肢はますます狭まることになる。(前中東支局長 大内清)

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