朝晴れエッセー

2人の時間・9月25日

「博ちゃん、おはよう」

半分開いたカーテンの光で顔をのぞくと、まだ眠たそうな顔が動く。8時「モーニングですよ」と朝食の乗ったワゴンを押して部屋に入る。モゾッモゾッと足を動かし「△○×△○×」と分からない言葉を発し起きようとする。ベッドを調整して座る体勢を作る。サァー1日の始まりです。

45歳のときに、脊髄小脳変性症という難病を発症し、つえをつきながら歩き、車椅子での生活。ハイハイをしながらトイレに行き、スプーンとフォークで食事をとっていた。ビールが好きで昼、夕、夜と1日3回うれしそうに飲んでいた。…それが昨年、3回目の脳梗塞を起こし、介護生活となってしまった。

「ハイ、向こうむいて、次はこっちやで」と細くなった体(細いとはいえ、まだ72キロはある。20キロ近く減少。身長180センチ近く)の大きい人だ。

しびれて痛い足で力もなかなか入らず、靴下がぬげてしまう。私自身、4年前難病と診断され、歩くのもままならない。でも、私の仕事は「主人の介護」と言い聞かせている。決して楽な仕事とはいえないけれど…。

2人でいる時間が楽しく思えるようになってきた。顔を見ればいとおしく思い、話しかける言葉にかわいく思う。赤ちゃんを、あやすときの感情にも似ている。

この時間がいつまでも続くといいのに…。窓の外を見ながら「また、1日終わっていくね」「○×△××○△」。夕食を食べさせながら話しかける。稲がやさしく笑っている。

中田壽代(68) 滋賀県米原市