2000万円報告書の撤回が決定 金融庁 HPへの掲載は継続

 金融庁の金融審議会(首相などの諮問機関)の総会が25日開かれ、95歳まで生きるには夫婦で2000万円の蓄えが必要とした報告書について、議題としないことを決めた。金融審で承認するという正式な手続きを経ないことになり、金融庁が今後、報告書を行政運営に活用することはなく、事実上の撤回が決まった。

 同報告書は傘下の市場ワーキング・グループ(WG)が6月に取りまとめたが、麻生太郎金融担当相が「世間に著しい不安や誤解を与えており、これまでの政府の政策スタンスとも異なる」と正式な受け取りを拒否。宙に浮いた状態が続いていた。報告書は今後もWGの報告書としてホームページに掲載し続ける。

 総会の冒頭、議題として取り上げないことを説明した金融庁の中島淳一企画市場局長は「審議会の議論をサポートする事務方としてこのような事態を招いたことを反省し、深くおわび申し上げたい」と謝罪した。

 報告書は6月3日に公表され、長寿化が進む中で老後に必要となる資産も増えていることから、早めの資産形成を呼びかける内容。しかし、その中で、総務省の家計調査を基に、夫65歳以上、妻60歳以上の無職世帯では毎月平均5万円の赤字が生じているとし、今後30年の人生があるとすれば、単純計算で2000万円が必要と試算した点が野党などから問題視された。

 報告書を議論しないことに対し、金融審の委員からは「報告書の内容に問題はなかった。こうした報告書が自由に出せないと国民に必要な情報が伝わらなくなる」「一部の記述で政策に反映されないのはあまりに残念」などといった意見が出た。

 市場WGは今後、議論の主軸を顧客本位の業務運営に移し、来春以降をめどに報告書を取りまとめる予定。

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