優勝が決まると、西武の辻監督は思いをかみしめるように、ゆっくりとベンチから出てきた。ナインの手で10度、宙を舞った。「連覇が大きな目標だったが、夏場からの選手たちの頑張りはびっくりするぐらいでした」。優勝インタビューで万感の思いを込めた。
2連覇に向け、不安材料が重なったままシーズンに入った。オフにエース菊池がフリーエージェント(FA)で米大リーグのマリナーズへ。昨季127打点を誇った浅村が楽天、ベテラン捕手の炭谷は巨人へ移籍した。「正直、しんどい戦いになる」と覚悟した。
昨年は開幕から一度も首位を譲らず、完璧な優勝だった。今年はアクセルを踏んでも、なかなか前へ進まなかった。7月には最大で8・5ゲーム差をつけられた。リーグ2連覇が遠のく中、8月には不動の4番だった山川を降格させた。2017年の9月から4番に固定していた日本を代表する強打者。4番から外すことは悩みに悩んだ。中村を4番に上げ、山川を6番か7番に置くと、打線がうまく回り、猛打もよみがえった。
リーグ最低のチーム防御率を猛打で補い、今月11日、130試合目にして初めて首位に立った。その直後、ソフトバンクにマジックナンバーを先に点灯されながら、投打ともに粘った。「私は何もしていません。選手たちがすごい力を発揮した」と指揮官も脱帽するしかなかった。
リーグ優勝を果たした昨年は、ソフトバンクにCSファイナルステージで敗れ、日本シリーズへ進めなかった。辻監督は「ここで終わるとは思わなかった」と号泣した。昨年の忘れ物を取りに行く戦いが始まる。(江目智則)