虎番疾風録

中西監督VS小津社長、結論持ち越し 其の参71

虎番疾風録 其の参70

10月14日、中西監督が小津社長と会談する日がやってきた。筆者は監督に伴って午前10時3分、名古屋発の新幹線に乗り込み、大阪へと向かった。

この日は最悪の天候だった。台風19号が紀伊半島沖を通過。東海、近畿地方は終日、強い雨と風が吹き荒れ、新幹線の窓を激しい雨がたたいた。

「阪神はええチームや。きっと強うなる。選手一人一人はええんやから。やり方次第ではようなる。ワシも一生懸命やったけど結果はあかなんだ。自分の才能の程度は分かってるつもりや。ワシが身を引くことで強くなれば、悔いはない」

その目は少し潤んでいるように見えた。思わず「監督、ご苦労さまでした」と手を握りたい衝動にかられた。大阪に戻った筆者は編集局にあがり、車内での様子を平本先輩に報告。「間違いなく監督は辞めます」と断言した。

「龍一は感動しいやからのう。けど、すんなりと辞められるかな。昔から阪神は、一筋縄ではいかん球団やからな」

〈まさか…〉

午後4時過ぎ、甲子園球場で小津-中西会談が始まった。会見場となったプレスルームには50人以上の報道陣が集まり、壁際にはテレビカメラの列ができていた。辞意の固い監督。翻意させるのは困難―と見極め、次期監督招聘(しょうへい)へと動き始めた球団。報道陣たちはみな、この日で「中西問題」に決着がつくと思っていた。午後5時半過ぎ、会見場に小津社長が姿をみせた。

「いま、終わりました。きょうのところは…」。きょうのところは? 報道陣にどよめきが起こる。

「16日に改めて話し合うことになりました」。なんと、結論持ち越しの継続審議となったのである。

なぜ継続? 決められなかった理由とは。何かが裏で起こっている。記者たちは一斉にその場から取材へと飛んだ。筆者は次の遠征(中日戦)へ向かう新大阪駅で監督をつかまえた。

「生意気かもしれんが、ボクの意見を述べ、いろんなことをお願いした。自分の能力も知っているし、辞めさせてほしいと真意を伝えた。オーナーが残留を希望しているというので即答をさけた。16日はどちらかが折れると思う」

どちらかが折れる―とはどういう意味だろう。午後7時46分発の新幹線に乗り込み名古屋へと向かった。(敬称略)

虎番疾風録 其の参72


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