朝晴れエッセー

顔・9月21日

私は若い頃から自分の顔が大嫌いだった。そのために人との対話が苦手で、就職においても、お見合いのときもずいぶん嫌な思いをしてきた。なので若い頃の自分の写真はほとんど処分し、1枚だけ残っていた中学校の全校生卒業写真集の自分の顔も黒く塗りつぶしていた。

このような私の態度に、苦労して産んで育ててくれた両親もさぞかし嘆いていたことだろう。

毎朝鏡の前で洗顔するときも、まともに自分の顔を見ることもなかった。そういっても、やがてやってくるお葬式の写真だけは早めに準備しておかなければならない。今ではその写真を撮るのにわざわざ写真屋まで足を運ぶ必要がなくなったのはうれしい限りだ。自分の持っているスマホで自撮りして、気に入らない部分は修正すればいいのだ。白髪頭を少し黒めにし、顔のしわも伸ばし弛みを引き締め、日焼け顔は白く塗りつぶせばいいのだ。たいそう便利な時代になったものだ。

そしてできあがった写真を見てびっくり。まるで別人のようだ。どこかで美容整形でもしてきたような男前に仕上がっている。(これが本当に自分の顔か?)としばらく見とれていた。

お葬式でこの写真を見た身内の者は、何と言うだろう。「こんな人、親戚にいたかな…?」と言うに決まっている。そのときはもう私は向こう側に行っているので何とでも言ってくれればいい。

こんなわけで今まで独身を貫いてきたが、余生の目標は『自分の顔に自信を持て』。そんな格言あったかな。