ところで、これは医療者と患者だけの問題だけではない。どのような職場においても、日々小さなコンフリクトがある。医療や介護業界でも医師不足、看護師不足、介護者不足の問題がある。職場での苦情クレーム対応は、しばしばストレスになり、離職に至る原因にもなっている。
ある調査では、本音の離職原因1位は上司や経営者の仕事の仕方、2位は勤務時間、環境への不満、3位は同僚、先輩との人間関係、4位は金銭的な問題であった。この理由は人間関係と組織で整えるべきシステムに大別される。
胸のうちの不満が募っているのに聴こうとしてもらえなければ、そのまま不満が積もって辞めるという行為に至るのである。
環境やシステムの問題とともに、経営者、職場の上司たるもの、「人」の深層の思いやそれぞれの背景を聴こうとしているであろうか。怒りやそれにつながる感情を理解し、対応を学んでいるであろうか。表層のやりとりで終わっていないだろうか。
方法はある、考え方は変えられるのである。コンフリクトマネジメントは出来事、自分や他者の感情を客観的、俯瞰(ふかん)してみることでもある。ぜひ理解を深め、学んでみてもらいたい。
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ながい・やよい 医療コンフリクトマネージャー。医学博士/皮膚科専門医。山形大医卒。群馬大学病院勤務時の平成26年、同病院の医療事故を指摘し、その後の対応にあたり医療改革を行う。群馬県出身。