ラグビーの2015年ワールドカップ(W杯)で日本代表がW杯2度優勝の南アフリカを破り、世界に驚きを与えた9月19日から4年となった。日本大会の開幕を20日に控え、イタリア-ナミビア戦(22日)など4試合が予定されている花園ラグビー場(大阪府東大阪市)では例年よりも作業を前倒しし、急ピッチで芝生の整備が進む。試行錯誤を重ねながらW杯に備えてきた職人は「最高の芝で本番を」と意気込んでいる。(鈴木俊輔)
W杯に合わせて改修されたスタンドの眼下に、鮮やかな緑が広がる。丁寧に刈り込まれた芝は、ふかふかとした柔らかな手触りと、ラグビーの激しい攻防に耐える強さを併せ持つ。東大阪市から整備を委託されている近鉄レジャーサービスの唐仁原(とうじんばら)幸一さん(47)は「本番まで気は抜けない」と表情を引き締める。
芝の種類や長さは、会場ごとに異なる。花園では、成長の時期が違う夏芝と冬芝の2種類を使い、ベースの夏芝を刈り込んだ上から冬芝の種をまく「オーバーシード」と呼ばれる方式を採用。根が強い夏芝に冬芝が絡み合うことでスクラムに耐える強固さを生み、表面を覆う柔らかい冬芝が、激しく動く選手を受け止めるクッションの役目を担う。
冬芝は、すり切れや踏みつけに強い品種と生育が早く病気に強い品種を配合したものを使用。種苗メーカー大手「タキイ種苗」(京都市)が協力し、開発には8年近くを費やした。芝の長さは、10~20ミリに刈るサッカーに比べて長い39ミリで、唐仁原さんは「選手を守ることを第一に考えた、ラグビーに最適な芝だ」と語る。
国内有数のラグビー専用競技場である花園は、数々のドラマを生んできた高校ラグビーの聖地。年末年始にかけて行われる全国高校ラグビーでは連日熱戦が繰り広げられるほか、大学の試合やトップチャレンジリーグ・近鉄ライナーズのホームとしても使われ、例年は9月上旬に冬芝の種をまき、試合が始まる10月に合わせて仕上げている。