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安倍首相の「信じて」にアル・カポネの名言でプーチン氏が反論

これまでロシアによる北方領土開発では、経済を主に担当するメドベージェフ首相や、露極東・北極圏発展省など経済関連省庁が前面に立つことが多かった。

メドベージェフ氏が8月に択捉島を訪問した際も、日露外交当局者の間では「外交を取り仕切るプーチン氏や露外務省ではなく、経済系省庁が主導したものだろう。日本への挑発というよりも、極東の発展のアピールや、北方領土を事実上管轄するサハリン州知事選へのテコ入れが主眼のはずだ」「プーチン氏が北方領土開発の直接的関与を示していないのは、日本への配慮の表れだ」との見方が出ていた。そのため、日露会談直前にプーチン氏が北方領土開発事業に関与する姿を示したことは、日本側を戸惑わせた。

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このプーチン氏の行動にも、サハリン州知事選に向けた選挙対策の側面があったとの推察は成り立つ。操業開始式典を取り仕切った地方政府側にも、極東を訪れたプーチン氏に自らの仕事ぶりを伝えたいとの思惑があったとみられる。それでも、日本の反発を予期していたはずのプーチン氏があえて式典に参加した事実は、プーチン氏の平和条約締結への意欲の減退を示している可能性が高い。

プーチン氏の意欲の減退を事実だと仮定した場合、その背景には、経済低迷や言論統制の強化などでプーチン政権への国民の不満が強まっている中、国内世論を無視して日露平和条約を締結し、北方領土の日本への引き渡しが現実味を帯びれば、政権運営に大きなリスクになるとの危惧があるみられる。日米安保条約への言及も、半分は本心としても、残る半分は交渉を引き延ばすための口実に過ぎないとの見方も出ている。

いずれにせよ確実なのは、日露平和条約交渉に目立った進展が見られないのは、米国との激しい対立や国内の政治基盤の弱体化など、プーチン氏の置かれた環境が大きく作用しているということだ。こうした状況が変わらない限り、日本がどれほど美辞麗句を重ね、日露関係正常化の魅力をアピールしたとしても、平和条約が実現する可能性は低いと言わざるを得ないだろう。