世界文化賞

演劇・映像部門 坂東玉三郎 歌舞伎の枠超えた女形で魅了

【第31回高松宮殿下記念世界文化賞】演劇・映像部門 インタビューに応じる坂東玉三郎氏(日本)=4月24日、東京・元赤坂の明治記念館(桐山弘太撮影)
【第31回高松宮殿下記念世界文化賞】演劇・映像部門 インタビューに応じる坂東玉三郎氏(日本)=4月24日、東京・元赤坂の明治記念館(桐山弘太撮影)

 日本が誇る伝統芸能、歌舞伎を担う女形の最高峰であり、海外の芸術家にも影響を与え、「世界の玉三郎」としてたたえられる希有(けう)なアーティスト。舞台での圧倒的な大きさと美貌、優婉(ゆうえん)にして繊細、品格を感じさせる芸風は現代歌舞伎の大きな魅力である。歌舞伎の枠を超え、映像、音楽などさまざまなメディアで多才ぶりを発揮している。

 幼い頃から踊ることが大好きだった少年は、十四世守田勘弥の養子となり、19歳で三島由紀夫・作「椿説弓張月(ちんせつゆみはりづき)」のヒロイン、白縫(しらぬい)姫に抜擢(ばってき)された。女形としては当時不利といわれた長身や清らかな風情は、新しいタイプの女形として時代の寵児(ちょうじ)となり、「玉三郎ブーム」が起きた。

 「男でありながら女を演じる女形というのは大変不思議な役柄で、私は究極、自分の肉体を使って、一つの作品になるというふうに考えています」と、女形についての思いを語る。

 謎のほほ笑みで男性を魅了する「籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)」の傾城・八ツ橋をはじめ、長らく玉三郎ひとりしか演じることのなかった「壇浦兜軍記(だんのうらかぶとぐんき)」の阿古屋(あこや)など当たり役は数多い。

 「演劇の根本でもあるのでしょうが、美と醜、善と悪、そういうものが複雑に絡み合っているお役にやりがいを感じますね」

 また、沖縄の組踊(くみおどり)や中国の昆劇(こんげき)にも女形として出演、女形という芸の多彩な表現を突きつめている。

 海外の芸術家にもインスピレーションを与え、世界文化賞受賞者のバレエダンサー、ミハイル・バリシニコフや振付家のモーリス・ベジャール、ポーランドの映画監督、アンジェイ・ワイダをはじめ、世界的チェリスト、ヨーヨー・マらとの数々のコラボレーションは、芸術の新たな地平を切り開くものとなった。

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