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「朝鮮戦争後」意識せよ 大阪大教授・坂元一哉

日韓首脳昼食会を前にあいさつする韓国の文在寅大統領(右)。左は安倍晋三首相=2018年5月9日、首相公邸(酒巻俊介撮影)
日韓首脳昼食会を前にあいさつする韓国の文在寅大統領(右)。左は安倍晋三首相=2018年5月9日、首相公邸(酒巻俊介撮影)

朝鮮戦争の勃発から来年で70年になる。軍人、民間人合わせて数百万人の死傷者、行方不明者を出したこの大戦争は、勃発の3年後に休戦になったものの、実は国際法的には、まだ終了していない。

だが最近の朝鮮半島情勢は、数年以内にそうなっても決しておかしくない様相を呈しはじめている。今後の日本の安全保障政策は、朝鮮戦争が法的に終わる、という意味での「朝鮮戦争後」を十分に意識したものでなければならないだろう。

実際に「朝鮮戦争後」の時代が到来するには、その前に北朝鮮の非核化-平和的にであれ、軍事的にであれ-が実現される必要がある。この点、米国のトランプ大統領は、昨年6月の米朝首脳会談以後、一方で北朝鮮への厳しい経済制裁を継続しつつ、他方で北朝鮮の独裁者と「親密」な関係を築き、核兵器を放棄すれば米国が北朝鮮の安全を保障するとの条件で、朝鮮半島に平和な非核化をもたらそうとしている。日本は、この米国の努力を引き続き支援していくべきだろう。

そのことに関連すると思われるが、7月になって政府は、安全保障上の理由から、フッ化水素など3点の戦略物資につき、韓国への輸出管理を厳格化する措置に踏み切った。この「安全保障上の理由」の具体的なところを政府は説明していない。

だが、「安全保障上の理由」という以上は、米国との相談があっての措置と考えるべきだろう。北朝鮮に対する経済制裁の解除に前のめりになっている、韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領への強い牽制(けんせい)の意図が背景にあるように思われる。

うまく非核化が実現し、「朝鮮戦争後」の時代になっても、米国は朝鮮半島の安全保障に関与し続けるだろう。それなしには「極東における国際の平和及(およ)び安全の維持」(日米安保条約)が難しいからである。

ただ在韓米軍の削減などで、関与のコストは大きく減らそうとするだろう。そのため米国の同盟国である韓国と日本は、「朝鮮戦争中」にも増して米国とよく協力し、その朝鮮半島関与を支えねばならなくなる。

だがこの点、いまの韓国はきわめて心許(こころもと)ない。先日、日本の輸出管理厳格化に激怒した韓国政府は、米国の明確な反対にもかかわらず、日本とのGSOMIA(軍事情報包括保護協定)破棄を通告した。「朝鮮戦争後」の朝鮮半島の安全保障のために韓国に求められる姿勢とは全く逆の姿勢といえる。

韓国政府の姿勢は、いわゆる徴用工問題などに見られる、常軌を逸した「反日」姿勢の一面でもある。その「反日」は、韓国なりの「正義」に基づくものかもしれない。だが日本との関係をいたずらに悪化させて政治的、経済的な困難を招くばかりか、安全保障感覚までおかしくするような「正義」が韓国の国益を大きく傷つけるのは明白である。

韓国にはそのことをよく実感してもらい、変わってもらうしかない。「朝鮮戦争後」の地域の安全保障のためにも、お願いしたいことである。(さかもと かずや)